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逆行列

逆行列とは、正則な正方行列に対して定義される行列です。行列とその逆行列の積をとると、単位行列になります。

定義

逆行列を求められるのは正方行列だけで、長方行列には逆行列は定義されません。さらに、行列 A の逆行列(A−1 と書きます)が存在するのは、その行列が正則(1次従属な行をもたない)であるときだけです。このとき、逆行列はただ一つに定まります。逆行列の主な性質は次の二つです。

(A−1)−1=A

そして何より重要な性質(これは逆行列の定義でもあります)は次のとおりです。

A⋅A−1=E

E は単位行列です。

逆行列の求め方

では、逆行列の求め方を説明します。いちばん簡単なアルゴリズムは掃き出し法(ガウスの消去法)です。行列 A を変形して単位行列にしていきますが、そのとき横に単位行列を書き、それにも A と同じ変形を行います。計算が終わると、左側では行列 A が単位行列に変わり、右側に逆行列ができています。簡単な例でやってみましょう。

(1234)

ひと目見ればこの行列が正則であることがわかるので、逆行列を求める意味があります。逆行列を求めるときは、ふつう次の形に書きます。

(12103401)

ここで左側の行列を単位行列に変形し、右側の行列にもまったく同じ変形を行います。第2行に第1行の −3 倍を加えます。まず左側の行列です。

(12100−201)

次に、右側の行列の第2行に、右側の行列の第1行の −3 倍を加えます。

(12100−2−31)

次は a12 の位置を0にしなければなりません。第1行に第2行を加えれば十分です。今度は両方の変形を一度に行います。

(10−210−2−31)

最後に、第2行全体をマイナス2で割って、マイナス2を1にします。

(10−210132−12)

求める逆行列は次のとおりです。

(−2132−12)

求めた逆行列が正しいかどうかを確かめたいときは、もとの行列とかけてみましょう。

(−2132−12)⋅(1234)=(1001)

確認には WolframAlpha も使えます。

行列式を使った求め方

逆行列は行列式を使って求めることもできます。正則行列 A があるとき、逆行列 A−1 の成分 aij−1 は次の式で表されます。

aij−1=(−1)i+j⋅|Aj,i||A|

左辺は i,j ですが、分子は j,i になっていることに注意しましょう。誤りではなく、わざと入れかえてあります。分子の Aj,i は行列 A の小行列で、行列 A から第 j 行と第 i 列を取り除いて得られる行列です。例えば

A=(123456789),

のとき、次のようになります。

A1,1=(⧸1⧸2⧸3⧸456⧸789)=(5689),A1,3=(4578),A2,2=(1379)

添え字が入れかわっているのが気になるなら、次のように書くこともできます。

(aij−1)T=(−1)i+j⋅|Ai,j||A|

つまり、添え字を入れかえずに計算すると、逆行列の転置行列が得られます。この転置行列をもう一度転置すれば、逆行列になります。

この方法で計算するのはふつう手間がかかります。ただし、手順がとても単純なので、コンピュータで計算するのに向いています。例では二つの成分だけを求めてみましょう。次の行列を考えます。

A=(3−452−313−5−1)

まず、この行列全体の行列式を求めます。これは分数の分母に使います。

det(A)=−1

次に、逆行列の最初の成分を求めます。これを a11−1 とします。この成分は次のようになります。

a11−1=(−1)1+1⋅|A1,1||A|

小行列 A1,1 が必要です。第1行と第1列を取り除くと、次の行列が得られます。

A1,1=(−31−5−1)

この行列の行列式を求めます。

det(A1,1)=8

これで公式に代入できます。

a11−1=(−1)2⋅8−1=1⋅8−1=−8

逆行列の最初の成分が求まりました。

A−1=(−8????????)

2番目の成分は次のように求めます。

a12−1=(−1)1+2⋅|A2,1||A|

小行列の行列式は次のとおりです。

det(A2,1)=|−45−5−1|=29

すべて代入すると、次のようになります。

a12−1=(−1)3⋅29−1=−1⋅29−1=−29−1=29

パズルのピースがまた一つはまりました。

A−1=(−829???????)

残りの成分も同じように求めていきます。