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統計の基本用語

統計は、データを調べ、整理し、そこから結論を引き出す学問です。

母集団

統計の目的は、調査や実験を行って、ある母集団について興味深いことを明らかにすることです。母集団とは、一般に、調べたいと考えている対象全体の集まりのことです。例えば、日本に住んでいる人の平均年齢を知りたいなら、母集団は日本に住んでいるすべての人です。

一方、乗用車が100キロメートル走るのに使うガソリンの平均量を知りたいなら、母集団は(その地域の)すべての乗用車の集合になります。

標本

母集団のすべての要素を調べることは、多くの場合できません。例えば、大学入試で数学を必須科目にすることについて、日本の人々がどう考えているかを知りたいとします。本当に全員の考えを知るには、一軒一軒家を回り、国民一人ひとりに意見を聞かなければなりません。このようなことは実際には不可能です。理由をいくつか挙げます。

  • 費用がかかりすぎます。約1億2,000万人の全員に質問するには、大きな費用がかかります。例えば、日本に住むすべての人を対象とする国勢調査(全数調査)には、数百億円もの費用がかかります。
  • 時間がかかりすぎます。国勢調査の準備には何年もかかります。1週間後に結果が必要な場合、これでは長すぎます。
  • 全員が答えてくれるとは限りません。質問には一切答えないと決めている人もいます。母集団が機械の場合は、機械が壊れることもあります。自動車の走行距離を調べようとしても、走行距離計が壊れたり、誰かがわざと数値を巻き戻したりすることがあります。
  • 実験が危険すぎることがあります。入試についての質問で心臓発作を起こす人はいないでしょうが、別の例を考えてみましょう。どんな病気にも効くという新薬「万能薬」の試験です。万能薬を日本の全国民で試していて、その途中で、試した人の20%がすぐにひどい下痢を起こすとわかったらどうなるでしょうか。まずはもっと少ない人数で試すほうがよさそうです。

このような欠点を避けるため、母集団から一部だけを選び出します。これを標本といい、標本だけを調べる調査を標本調査といいます。母集団を P とすると、標本 V は P の任意の部分集合、つまり V ⊆ P です。調査はこの標本 V だけについて行い、その結果を母集団全体に当てはめます。当然、この結果には誤差があります。誤差の大きさは、主に標本 V の大きさと、V の要素を選ぶ方法によって決まります。

よくある失敗には、次のようなものがあります。

  • V の要素の個数が少なすぎる。入試での数学の必須化について、最初に見かけた7人に聞いただけでは、意味のある結果は得られません。
  • 母集団を代表しない選び方をしている。大学入試での数学の必須化について、大学の数学科の卒業生1,000人に聞いた場合と、高校2年生1,000人に聞いた場合とでは、違う答えが返ってくるでしょう。

変量

調査では、標本の要素を調べます。調べる項目を変量といい、変量がとる値をデータの値といいます。変量には、次のような基本的な種類があります。

  • 質的変量:ふつうは測っても意味のない変量で、言葉で表される値をとります。典型的な例は国籍の質問です。このような変量の値は、例えば「日本国籍」「韓国国籍」などです。日本国籍と韓国国籍を測ったり大小を比べたりすることには意味がありません。日本人と韓国人の人数は比べられますが、国籍そのものは比べられません。

大学入試での数学の必須化についての質問もこの種類に入ります。予想される答えは「はい、数学を必須にしてほしい」と「いいえ、数学を必須にしてほしくない」で、これがこの変量の値です。この場合も答えの数は比べられますが、「はい」と「いいえ」そのものを比べることには意味がありません。

  • 量的変量:測ることのできる変量です。長さ、重さ、時間、個数などがこれに当たります。量的変量は、さらに離散変量と連続変量に分けられます。

離散変量

離散変量がとる値は、有限個か、可算無限個(後で説明します)です。整数値をとることがよくあります。例えば、クラスの生徒の人数です。ふつうのクラスなら、15人から40人くらいでしょう。

離散変量では、ある値の次の値と前の値が必ずわかります。3年B組の生徒が28人なら、前の値は27人、次の値は29人です。質的変量では、たいていこれができません。「日本国籍」の次の値は何でしょうか。

離散変量は無限個の値をとってもかまいませんが、その値は可算でなければなりません。つまり、前の値と次の値を常に決められなければなりません。例えば、「1キロメートル単位で測った2つの物体の距離」という変量を考えることができます。2つの物体、例えば自動車と納屋の距離を測って12キロメートルだったとすると、やはり次の値は13キロメートル、前の値は11キロメートルです。距離にはおそらく上限がありません。1,500,000キロメートル離れた2つの物体があれば、1,500,001キロメートル離れた物体もきっと見つかります。

測る単位を0.1キロメートル(つまり100メートル)にしても、この変量は離散変量のままです。その場合、距離が15.7 kmと測られれば、次の値は15.8、前の値は15.6です。

前の値や次の値が存在しないことがあっても、離散変量でないことにはなりません。例えば、距離が0キロメートルのとき、前の値はありません。マイナス1キロメートルという距離は定義しないからです。それでも、1キロメートル単位で測った距離は離散変量です。

連続変量

連続変量がとる値は、常に無限個あります。値はふつう実数なので、例えば距離(測る細かさを決めない場合)が連続変量です。連続変量では、前の値も次の値も決められません。ある距離を測って3.58745メートルだったとしても、この数のすぐ次にある数を見つけることはできません。

実数には、小数で表すと無限に続く無理数も含まれます。もちろん、そこまで細かく距離を測れる装置はないので、現実にはこのような変量もすべて離散変量です。どんな装置にも測れる細かさの限界があるからです。定規で測れば、1ミリメートル単位までしか測れません。本の幅が167 mmか168 mmかはわかりますが、その間の値は、目分量で読み取りでもしない限りわかりません。

もっと精密な装置を使えば、1マイクロメートル単位で測れることもあります。それでも、物体を完全に正確に測るにはおそらく足りないでしょう。

それにもかかわらず、ふつうは距離や重さを連続変量として扱います。実際にはこのような単純化が必要で、たいていは何の問題もありません。

確率変数

確率変数とは、離散変量または連続変量のうち、調査や実験を行う前にはその値を決められないものです。例えば、さいころを投げて出る目は確率変数です。さいころを投げるまでは、どの目が出るかわかりません。

ある値がほかの値より出やすいと予想できてもかまいません。ある特定の値が出ると完全には確信できなければよいのです。例えば、日本に住んでいる人を無作為に1人選んで、どの市町村に住んでいるかを聞くとします。その人がある小さな村に住んでいる可能性よりも、東京に住んでいる可能性のほうが高いでしょう。東京にはそれだけ多くの人が住んでいるからです。

5つの面が6の目で、残りの1つの面が2の目のさいころがあるとします。このさいころを投げると、6の目が出る可能性のほうがずっと高くなります。それでも、6の目が出ると決まっているわけではないので、これは確率変数です。

このさいころを作り直して、6つの面すべてを6の目にしたとすると、さいころを投げて出る目は確率変数ではなくなります。いつも6の目が出るからです。

参考文献