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サンクトペテルブルクのパラドックス

サンクトペテルブルクのパラドックスには、統計、意思決定、確率がまざりあっています。サンクトペテルブルクのカジノが、ある金額の賞金をもらえるゲームを用意しています。このゲームの公平な参加料はいくらになるかを考えるのが、ここでの問題です。

ゲームのルール

ゲームに参加すると、係の人がコインを投げはじめます。1回目に表が出たら、ゲームは終わりで、賞金は1ユーロです。裏が出たら、ゲームは続きます。2回目も、またコインを投げます。表が出たら、ゲームは終わりで、賞金はその前にもらえたはずの金額の2倍、つまり2ユーロです。裏が出たら、さらに続けます。3回目に表が出たら4ユーロ、4回目に表が出たら8ユーロもらえます。

一般に、k 回目にはじめて表が出たら、賞金は 2k − 1 ユーロです。では、このゲームの公平な参加料はいくらでしょうか。

期待値

公平な値段は、期待値をもとに決めるべきです。たとえば、平均で100ユーロもらえるなら、参加料は100ユーロ、正確には、カジノがもうけを出せるようにそれより少し高くするべきです。では、このゲームの期待値はいくらでしょうか。それぞれの賞金をもらえる確率を書き出してみます。左の列が賞金、右の列がその賞金をもらえる確率です。たとえば、1回目に表が出る確率は 12 です。はじめに裏、次に表が出る確率は 14 です。ほかも同じように求めます。

11/221/441/881/16161/32……

期待値はどのように計算すればよいでしょうか。もらえる金額に、その金額をもらえる確率をかけて、すべてたします。すると、次のようになります。

E=12⋅1+14⋅2+18⋅4+116⋅8+…=12+12+12+12+…=∑k=1∞12=∞

期待値は無限大です。つまり、理想的な場合には、賞金の期待値は無限に多くのユーロになります。悪くない話に見えます。問題は、それなら参加料も無限大でなければならないことです。もちろん、そんなことはありえません。

このパラドックスに対しては、もちろん次のような反論があります。ゲームを無限に長く続けることはできませんし、無限のお金をもらうこともできません。それに、コインを投げる回数の上限を無限大からある有限の数 n に「減らした」としても、すぐに世界のだれも持っていないような金額になってしまいます。たとえば、41 回投げたあとには、賞金は 240 ユーロ、およそ1兆ユーロになります。さらに10回投げれば、その1000倍の金額です。

有限の参加料

もちろん、参加料として無限のユーロを払う人はいません。それでも、このパラドックスは、有限の金額でもある程度は示せます。1ユーロ単位のどんな金額についても、期待値がちょうどその金額になるような、コインを投げる回数の上限があるからです。たとえば、参加料を1000ユーロにしたいなら、コインを投げる回数の上限を2000回にします。すると、次のような和を計算することになります。

∑k=1200012=2000⋅12=1000

このとき、期待値は 1000 ユーロになります。参加料を D ユーロにしたいなら、コインを投げる回数の上限を 2D 回にすればよいのです。

しかし、もちろん、1000ユーロより多くもらえる見込みがほとんどないのに、たとえば1000ユーロもの参加料を払う人はいません。

参考リンク

章: モンティ・ホール問題, 誕生日のパラドックス, ベンフォードの法則, 確率のうそつきのパラドックス, ネクタイのパラドックス, シンプソンのパラドックス, 偽陽性のパラドックス, サンクトペテルブルクのパラドックス, 非推移的なさいころ