✖

無限大での有限の極限

関数の極限は、解析学でもっとも重要な概念の一つです。ある点の近くで関数がどうふるまうかを表すもので、これを使ってたとえば関数の連続性を定義できます。関数の極限を使うと、関数がまったく定義されていないところでのふるまいも理解できます。

無限大での有限の極限

この状況は数列の極限と似ています。無限大に近づくとき、関数がどんな極限をもつかを調べます。極限は有限の場合も、無限大になる場合もあります。まず有限の極限から始めましょう。

∞ を関数 f の定義域の集積点とします。次が成り立つとき、L ∈ ℝ を ∞ における関数の極限といいます。

(∀ϵ>0)(∃A∈R)(∀x∈D(f))(x>A⇒|f(x)−L|<ϵ)

同様に、次が成り立つとき、−∞ における関数の極限といいます。

(∀ϵ>0)(∃A∈R)(∀x∈D(f))(x<A⇒|f(x)−L|<ϵ)

この定義は何を述べているのでしょうか。極限と考える L のまわりに(つまり y 軸上に)ϵ 近傍を選ぶと、x 軸上にいつもある点 A が見つかり、A より右にある任意の点 x、つまり x>A について |f(x) − L| < ϵ が成り立つ、ということです。言いかえると、すべての関数の値は極限 L からの距離が ϵ より小さくなります。

関数 f(x) = (2/x) + 1 を考えます。グラフは次のとおりです。

関数 f(x)=(2/x)+1 のグラフ

x の値を無限大に近づけると、関数の値 f(x) は1に近づくことがわかります。そこで L = 1 とします。では、L = 1 が本当に正の無限大でのこの関数の極限であることを証明しましょう。まず試してみます。たとえばイプシロンを ϵ=12 とします。次に、A より大きいすべての x で関数の値と L の距離が ϵ より小さくなるような A ∈ ℝ を探します。図にかいてみましょう。

\epsilon をかき込んだ関数 f(x)=(2/x)+1 のグラフ

関数の値 f(x) と点 L の距離が ϵ より小さいとは、関数のグラフの曲線がこの赤い線の間にあるということです。ここで、x 軸上の値 A で、それより右ではこの条件が満たされるものを見つけなければなりません。いちばん小さい値である必要はないので、たとえば A = 6 を選べます。

\epsilon と点 A をかき込んだ関数 f(x)=(2/x)+1 のグラフ

A より右では、グラフの曲線は、L からの距離 ϵ を示す赤い線の間にすべて入っていることがわかります。ここまでは1つの具体的な ϵ について示しただけです。L = 1 が本当に極限であることを証明するには、すべての ϵ > 0 について示せなければなりません。

そこで、次の関係がどんな A で成り立つかを調べます。

x>A⇒|f(x)−L|<ϵ

代入すると次のようになります。

x>A⇒|(2x+1)−1|<ϵ.

1どうしが打ち消し合います。

x>A⇒|2x|<ϵ

さらに、正の x だけを考えることにします(知りたいのは正の無限大に近づく x の値です)。すると絶対値をはずせます。

x>A⇒2x<ϵ

両辺に x をかけます。

x>A⇒2<x⋅ϵ

両辺を ϵ で割ります。

x>A⇒2ϵ<x

変形の結果、x は 2/ϵ より大きくなければならないことがわかりました。したがって、A に 2/ϵ より大きい数を選べば、求める値が得られます。

前の試しでは ϵ=12 を選んだので、A には 2/12=4 より大きい数を選ぶ必要がありました。選んだのは A = 6 なので、条件を満たしています。

章: 関数の極限, 有限の点で無限大に発散する極限, 無限大での有限の極限, 無限大で無限大に発散する極限, 片側極限, ロピタルの定理