✖

片側極限

ふつうは両側極限、つまり関数の値が左からも右からもどの点に近づくかを調べます。しかし、片側極限、つまり左からだけ、または右からだけの極限を調べることもできます。

片側極限

ある関数 f(x) と、極限を求めたい点 x0 があるとします。ふつうは次のように書きます。

limx→x0f(x)=?

しかし、点 x0 には片側からだけ、つまり左からだけ、または右からだけ近づくこともできます。これは、マイナスとプラスの記号を右上の添え字として書いて表します。「x が左から7に近づく」と「x が右から10に近づく」は、次のように書きます(日本の教科書では、7-0、10+0 のように -0、+0 をつけて書きます)。

limx→7−f(x)=L1limx→10+f(x)=L2

定義は簡単に変えられます。集積点の近傍全体ではなく、その左側か右側の近傍だけを考えればよいのです。右側極限の定義は次のようになります。

(∀ϵ>0)(∃δ>0)(∀x∈D(f))((x0<x<x0+δ)⇒|f(x)−L|<ϵ).

ならば(⇒)の前の部分では、x0 より大きい x だけ、つまり数直線上で x0 より右にある x だけを考えていることに注目しましょう。左側極限の定義は次のとおりです。

(∀ϵ>0)(∃δ>0)(∀x∈D(f))((x0−δ<x<x0)⇒|f(x)−L|<ϵ).

左側極限と右側極限は、一般には等しいとは限りません。いくつかの場合があります。関数がその点で左側極限も右側極限ももつ場合、どちらか一方だけをもつ場合、どちらももたない場合です。

関数 f が点 x0 で極限をもつのは、その点で左側極限と右側極限をもち、しかも両方が等しいとき、そしてそのときに限ります。片側極限が両方あっても、それらが異なるなら、関数はその点で極限をもたず、片側極限だけをもちます。

簡単な関数 f(x) = 1/x で、これらをすべて見てみましょう。グラフは次のとおりです。

関数 f(x)=1/x のグラフ

x が1に近づくときの極限は、ごく簡単な場合です。点1で関数は連続で、定義されていて、まったく素直な例です。左からも右からも関数の値は1に近づくので、極限も1になります。では、x が0に近づくときの極限を求めたいときはどうでしょうか。

limx→01x=?

これは面白い例です。関数の定義域に含まれない点で極限を求めようとしていることに注目しましょう。関数に0を代入すると、意味のない式になります(0で割ることはできません!)。しかし、まったく問題ありません。定義に出てくるのは集積点で、0は定義域の集積点だからです。0のどんな近傍にも、関数の定義域の要素が見つかります。

グラフを見ながら左側から0に近づくと、関数の値はどこまでも小さくなっていくことがわかります。例を挙げます。

f(−10)=−1/10f(−1)=−1f(−12)=−2f(−1/10)=−10

0に「とても」近い負の数、たとえば −0.000 001 をとると、関数の値は「とても」小さい数 −1,000,000 になります。

左側から0に近づくほど、関数の値は負の無限大に近づきます。逆に、右側から0に近づくと、関数の値は大きくなっていきます。右から0に近づくほど、関数の値は無限大に近づきます。これはどう考えればよいでしょうか。簡単です。関数は点0で極限をもたない、というだけです。異なる2つの片側極限だけをもちます。

limx→0−1x=−∞limx→0+1x=+∞

章: 関数の極限, 有限の点で無限大に発散する極限, 無限大での有限の極限, 無限大で無限大に発散する極限, 片側極限, ロピタルの定理