✖

集合

集合は、要素の集まりと考えることができます。どの集合も、いくつかの要素を含んでいて、その個数は有限のこともあれば無限のこともあります。要素を1つも含まないこともあり、そのときは空集合といいます。集合はふつう大文字、たとえば M で表し、集合の要素は小文字 m で表します。

集合とは

集合は数学の基本的な概念の1つで、多くのものが集合を使って定義されます。そのため、あとで迷わないように、はじめに集合とは何かをはっきりさせておくとよいでしょう。

集合とは、何らかの要素の集まりです。数学では、数の集合、つまり要素が数である集合をあつかうことがいちばん多いです。数学での集合の典型的な書き方は、次のとおりです。

M={1,2,3}

これで、1、2、3の3つの要素を含む「M」という名前の集合を表しました。集合はいつも中かっこの中に書きます。中かっこを見たら、ほとんどいつも何かの集合だと思ってかまいません。

集合は何に使えるでしょうか。集合は、どの要素を選んでよいかを決めることがよくあります。たとえば、ふだんの生活で「花子ちゃん、ゲームしようよ。1から5までの数を1つ思いうかべて」と言ったとします。これで、花子ちゃんが選べる数の範囲を決めたことになります。数学なら、これに集合を使います。

L={1,2,3,4,5}

そして、花子ちゃんに「花子ちゃん、ゲームしようよ。集合Lに含まれる数を1つ思いうかべて」と言えばよいのです。ゲームがぐっとおもしろくなるにちがいありません。数学では、要素が集合に属することを記号 ∈ で、属さないことを ∉ で表します。1は集合 L に属するが、7は属さない、と言いたいときは、1 ∈ L、7 ∉ L と書きます。

もちろん、集合は空のこともあります。それには P = {} と書くか、もっと簡単に P = ∅ と書きます。どちらの書き方も「空集合」を表すことに注意しましょう。P = {∅} と書くと、空集合を要素として含む集合を表すことになります。これは空集合と同じではありません。

順序と重複

集合の要素には、順序はないと考えます。集合は、順序のない要素の集まりです。2つの集合 A = {1, 2, 3} と B = {3, 2, 1} は、同じ集合だといえます。要するに、集合の中の要素の順番は関係ないのです。

同じように、重複した要素も考えに入れません。集合に同じ要素(同じ数)がいくつも含まれていても、その要素は1回だけ現れるものとして考えます。たとえば、2つの集合 A = {1, 1, 2, 2, 2} と B = {2, 1} は、同じ集合だと考えます。集合 A は要素が2回や3回くり返されているので、要素が「多い」ように見えますが、問題ありません。集合をあつかうときは、重複した要素はとりのぞいて考えるのです。

集合の大きさと相等

集合の大きさ、つまり集合に含まれる要素の個数を定義できます。前の例の A = {1, 1, 2, 2, 2} と B = {2, 1} では、集合 A の大きさは2で、集合 B の大きさも2です。要素の個数を数えるときも、重複した要素は考えに入れないからです。集合の大きさは、縦線ではさんで |A| = |B| = 2 のように書きます(高校の教科書では、要素の個数を n(A) と書きます)。

もうわかったと思いますが、2つの集合は、同じ要素をもつとき等しいといいます。いくつか例を挙げます。

{1,2,3}={1,2,3}{1,2,3}={1,2,3,2,3,1}{a,h,o,j}={o,o,h,j,a,o}{1,3,5,9}≠{1,3,9}∅≠{x}

大切な性質として、集合は要素としてまた集合を含むことができます。例:C = {1, 2, {3, 4, 5, 6}}。集合 C の要素は6個ではなく3個だということを、しっかり理解しておきましょう。集合 C は、1、2、そして1つの集合の3つの要素を含んでいます。要素 3, 4, 5 と 6 を含んでいるのは内側の集合で、集合 C ではありません。したがって、|C| = 3 です。もう少し複雑な例です。

D={0,{1,{2,3}},{4}}

集合 D にはいくつの要素があるでしょうか。要素は次の3つです。

D1=0,D2={1,{2,3}},D3={4}

集合には、有限集合と無限集合があります。ここまでに挙げた集合は、すべて有限集合です。無限集合の例は、すべての数の集合です。

部分集合

2つの集合 A = {1, 2} と B = {1, 2, 3} を考えます。要素がすべて一致するわけではないので、異なる集合で、集合 B のほうが大きいです。しかし、集合 B は集合 A とまったく同じ要素を含み、そのうえ要素 3 も含んでいることに気づいたでしょう。このとき、A は B の部分集合であるといいます。

A が B の部分集合であるなら、集合 A に含まれる要素はすべて、集合 B にも含まれていなければなりません。部分集合であることは関係の1つで、記号 ⊆ を使って書きます。正確な定義は次のとおりです。

A⊆B⇔∀x∈A:x∈B

ふつうは、集合 A と B が等しくても A ⊆ B が成り立つと考えます。等しい場合を除いた部分集合を表したいときは、別の記号 ⊂ を使います。A ⊂ B なら、集合 B は(有限集合なら)より大きく、集合 A が含まない要素を含んでいなければなりません。このような集合を「真部分集合」といいます。つまり、A ⊂ B なら、A は B の真部分集合です。なお、日本の高校の教科書では、記号 ⊂ を2つの集合が等しい場合も含めた部分集合(この記事の ⊆)の意味で使います。真部分集合の定義は次のとおりです。

A⊂B⇔(A⊆B∧A≠B)

ふつうの部分集合と同じ定義ですが、2つの集合が等しくてはいけません。いくつか例を挙げます。

{a,h,o}⊆{a,h,o,j}{a,h,o}⊂{a,h,o,j}{2,4,6}⊆{2,4,6,8,…}{2,4,6}⊂{2,4,6,8,…}{1,2,3}⊈{1,3}{1,2,3}⊄{1,3}{0,1}⊆{0,1}{0,1}⊄{0,1}∅⊆{π}∅⊂{π}∅⊆{∅}∅⊂{∅}{0}⊈∅{0}⊄∅{⋄,△,⊙,‡,≀}⊆{⋄,△,⊙,‡,≀,⋆,∙,∓}{⋄,△,⊙,‡,≀}⊂{⋄,△,⊙,‡,≀,⋆,∙,∓}

部分集合の性質:

  • A ⊆ A:集合はいつも自分自身の部分集合です。
  • A ⊄ A:集合はけっして自分自身の真部分集合ではありません。
  • ∅ ⊆ A:空集合はどんな集合の部分集合でもあります。
  • A ⊄ ∅:空集合には真部分集合がありません。

部分集合を使うと、集合の相等を次のように書けます。

A=B⇔A⊆B∧B⊆A

2つの集合が等しければ、たがいに相手の部分集合です。

部分集合の関係を「包含関係」ということもあります。

べき集合

べき集合とは、ある集合のすべての部分集合を要素とする集合です。ふつうは P(M) または 2M と書きます。

例:M = {1, 2, 3} とします。部分集合をすべて挙げるとどうなるでしょうか。空集合と、集合 M そのものはもちろん部分集合です。さらに、{1}, {2}, {3}, {1, 2}, {1, 3}, {2, 3} があります。これらの集合すべてが、集合 M のべき集合をつくります。式で書くと、P(M) = {∅, M, {1}, {2}, {3}, {1, 2}, {1, 3}, {2, 3}} です。

空集合はどんな集合の部分集合でもあり、M はいつも M の部分集合なので、つねに ∅ ∈ P(M) と M ∈ P(M) が成り立ちます。

集合の書き表し方

1つの方法は、すでに見たように、要素をならべて書く方法です。中かっこを使って、M = {1, 2, 3} や N = {a, b, c, d} のように書きます。無限集合を書くときは、要素がどう続くかが明らかなら、点を3つ打って M = {1, 2, 3, …} のように書いてもかまいません。

集合を書き表すおもな方法は、集合の要素がもつ性質(条件)を書く方法です。一般には {x ∈ X | P(x)} のように書きます。X は要素を選ぶもとの集合で、P(x) は集合の要素を決める条件です。条件は、純粋に数式で書いても、言葉で書いてもかまいません。「|」のかわりに、セミコロン「;」を使うこともあります。

たとえば、月の日付を表す数をすべて集めた集合を M とします。1か月は最大31日なので、この集合は1から31までの31個の要素をもちます。点を3つ使って、M = {1, 2, 3, …, 30, 31} と書けます。同じ集合を、{x ∈ ℤ | x は月の日付を表す} と書くこともできます。ここで ℤ は整数の集合を表します。

もっと数学らしい例として、5で割り切れる正の数をすべて集めた集合を P とします。この集合は P = {5, 10, 15, 20, 25,…} となります。

10より小さい自然数の集合Tを、数式で書いてみましょう。T = {x ∈ ℕ | x<10} です。この書き方は、集合 T が、自然数の集合からとった要素 x のうち、10 より小さいという条件を満たすものからなる、ということを表しています。そこで、自然数のうち10より小さいものだけを取り出すと、{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9} になります。これだけです。

次の例です。Y = {x ∈ ℤ | x ≠ 0}。集合 Y を、整数からとった要素 x からなる集合として定義しました。x が満たすべき条件は、0でないことだけです。したがって、集合 Y は、0以外のすべての整数を含みます。

次の例です。G = {x ∈ ℝ | x · x = x}。集合 G は、実数からとった要素 x からなり、すべての要素 x について、自分自身をかけるとまた x になる、という条件が成り立たなければなりません。たとえば5で試してみましょう。定義によると、5 · 5 = 5 が成り立つ必要があります。これは明らかに成り立たないので、5は集合Gの要素ではありません。1で試すと、1 · 1 = 1 です。これは明らかに成り立つので、1は集合 G の要素です。もう1つの、そして最後の要素は0です。ほかの数ではもう成り立ちません。したがって、G = {0, 1} と書けます。

最後の例です。条件が複雑になることもある、ということを見るために、少し複雑なものを書いてみます。

X={x∈R|(x2=2x)∨(sin⁡(x)=π∧cos⁡(x)=π)}

実際には、集合は要素の条件で定義されることがいちばん多く、数学の概念のかなりの部分は集合を使って定義されているといえます。たとえば区間を考えると、区間 (a, b) とは、次の式を満たす集合 I のことだといえます。

I={x∈R|(x>a)∧(x<b)}

実数の集合の要素のうち、a より大きく b より小さいものすべてです。これはまさに、区間が表しているものです。

参考リンク

章: 集合, 和集合・共通部分・差集合・補集合, 可算集合, 集合論のパラドックス