ネイピア数はどこから来たのか
ネイピア数は、円周率 π などと並んで、最もよく知られた数学の定数の1つです。日本ではネイピア数と呼びますが、英語などではオイラーにちなんでEuler's numberと呼ばれています。ここでは、この数がどのようにして見つかったのか、何を意味するのかを見ていきましょう。
17世紀、スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイは、複利に興味をもっていました。1円を、年利100%の銀行に預けるとします。銀行としてはまったくむちゃな話ですが、数学のためなら何でもしてくれるのでしょう。ちょうど1年後、口座にはいくらあるでしょうか。2円です。
では、銀行が「利率は50%で、そのかわり半年ごとに利息をつけます」といってきたらどうなるでしょうか。こちらのほうが得でしょうか、それとも損でしょうか。
最初の半年がたつと、お金は半分増えます。「半分増える」は、数学では
半年後、口座には1.5円あります。次の半年がたつと、さらに半分だけ増えます。同じ式を使い、x に新しい残高 1.5 を代入します。
こうして、1年後には口座に2.25円あります。利率が低くても、より頻繁に利息がつくほうが得なのです。
毎月利息がつく場合
銀行が毎月利息をつけるかわりに、利率をもとの12分の1に下げたらどうでしょうか。ふう、少し計算が大変になります。最初の1か月後の残高はいくらでしょうか。「12分の1だけ増える」ので、
2か月後には、次のようになります。
ここで、1.0833333のかわりに
3か月後には、口座の残高は次のようになります。
計算に、あるパターンがあることがわかります。かっこの中の式が、何か月目を計算しているかと同じ回数だけくり返されています。そこで、3つの同じかっこを書くかわりに、1つのかっこを3乗して、式を簡単にできます。
最初の1をかけるのも必要ないので、取りのぞきます。
12か月後の残高を計算したいなら、指数の3のかわりに12を使うだけです。
12か月後、口座にはおよそ2.6130352円あります。悪くありません。年利100%のときよりずっと得です。
連続複利
月ごとで止める必要はありません。毎週、もとの利率の
毎日なら?
1時間ごとなら?(1年は8,760時間です)
利率を下げて、そのぶん頻繁に利息をつけるほど、最後に口座にあるお金は少しずつ増えます。しかし、増え方はもうあまり大きくありません。このまま限りなく続けることもできます。いや、これはじつは悪くない考えです。毎分、毎秒、1ミリ秒ごと、1ナノ秒ごと…と利息をつけていけば、ついには絶えず利息をつけている状態になります。ほんのわずかな利息が、残高にあらゆる瞬間に連続してつくのです。この場合、1年後に口座にはいくらあるでしょうか。
ネイピア数にもどる
これこそ、ヤコブ・ベルヌーイが求めようとした問題です。残念ながら彼は答えを出せず、答えを出したのは18世紀の有名な数学者レオンハルト・オイラーでした。オイラーは、1年後の口座の残高が次の金額(円)になることを計算しました。
1時間ごとに利息をつけた場合と比べて、それほど多くないことがわかります。この残高、つまりこの数は、数学のさまざまな分野でとても重要であることがわかり、ネイピア数と呼ばれて、文字 e で表すようになりました。ネイピア数は無理数、つまり循環しない無限小数です。円周率 π と同じです。そのため、すべての桁を見ることはけっしてできません。それでも、関数の極限を使って、ネイピア数を正確に定義できます。
参考リンク
- 英語のチャンネルNumberphileの、ネイピア数についてのすばらしい回。
- 住宅ローンの利息の計算のしかた