運動の例題
物理は読むだけでは身につかず、計算してはじめて身につきます。ここでは運動の例題を13問、道のりと変位から始めて、加速度、自由落下を経て向心加速度まで並べました。最後の2問では、いくつかの種類の運動が入れかわります。どの問題も同じ手順で解きます。与えられた量を書き出し、単位を換算し、文字のまま式を解き、単位をつけて数値を代入し、見積もりで確かめ、答えを文で書きます。どの例題も、まず自分で解いてみてから解答を読みましょう。
例題1:さくらさんの犬の散歩
さくらさんは犬を連れて、1辺 120 m の正方形の公園のまわりを歩きます。公園の1つの角から出発し、3辺を歩きました。歩いた道のりと変位の大きさはそれぞれどれだけでしょうか。
解答:
道のりは軌跡の長さ、つまり公園の3辺の長さです。
変位は、出発した場所から到着した場所へ向かう矢印です。正方形の3辺を歩くと、出発点ととなり合う角に着くので、変位は4つ目の辺に沿っています。
さくらさんは 360 m 歩きましたが、出発した場所からは 120 m しかはなれていません。公園を1周すれば、歩いた道のりは 480 m で、変位は0になります。
例題2:坂を上って下る
健太くんは、長さ 3 km の道を自転車で速さ 12 km/h で上って丘の上まで行き、同じ道を速さ 36 km/h で下ります。平均の速さはどれだけでしょうか。
解答: 2つの速さを足して2で割りたくなります。そうすると 24 km/h になります。しかし平均の速さは、全体の道のりを全体の時間で割ったもので、健太くんは上りに下りよりずっと長い時間をかけています。
すべてキロメートルと時間で与えられているので、換算は必要ありません。走った時間は
数値を代入します。
健太くんは上りに15分、下りに5分かかりました。全体で20分です。6 km を3分の1時間で進むなら、1時間では 18 km 進むことになります。健太くんの平均の速さは 24 km/h ではなく 18 km/h です。
例題3:山小屋から歩く花子さん
山小屋が、村から 4 km はなれた道ぞいにあります。花子さんは山小屋から、村から遠ざかる向きに一定の速さ 5 km/h で歩きます。1 時間 12 分後、花子さんは村からどれだけはなれているでしょうか。
解答:
換算に注意しましょう。12分は 0.12 h ではなく、
キロメートル毎時に時間をかけるとキロメートルになるので、単位も合っています。花子さんは1時間で 5 km 歩き、1.2 h ではその5分の1だけ多い 6 km 歩くので、山小屋までの距離を加えると10 kmです。花子さんは村から 10 km の所にいます。1.12 h を代入すると、9.6 km というまちがった答えになります。
例題4:お母さんに追いつく翔太くん
お母さんがベビーカーを押して、速さ 4 km/h で家を出ます。15分後、翔太くんはお母さんがかぎを忘れたことに気づき、同じ道を速さ 10 km/h で走って追いかけます。何分後に、家からどれだけはなれた所で追いつくでしょうか。
解答:
15分後には、お母さんは s0 = v1 · t0 = 4 km/h · 0.25 h = 1 km 先にいます。追いつく問題では、2人の間の距離は速さの差の分ずつ縮まります。
その間に翔太くんが走る道のりは次のとおりです。
検算:お母さんは 15 + 10 = 25 分、つまり
例題5:チーター
チーターは、静止した状態から 2.5 s で 72 km/h まで加速します。平均の加速度はどれだけでしょうか。また、そのあとこの速さから 4 s で止まるとき、加速度はどれだけでしょうか。
解答:
加速度の公式より、次のようになります。
チーターの加速度は 8 m/s2 で、1秒ごとに速さが 8 m/s ずつ増えます。時速100 kmまで10秒かかる乗用車の加速度は 3 m/s2 足らずなので、スタートではチーターが楽に勝ってしまいます。
止まるときは、速さが 4 s で 20 m/s から0まで下がります。
走る向きを正の向きとしたので、負の加速度はブレーキを表します。止まるときのチーターの加速度は −5 m/s2、つまり 5 m/s2 の減速です。
例題6:飛行機に必要な滑走路の長さ
旅客機が離陸のとき、静止した状態から一定の加速度 2 m/s2 で加速し、速さ 252 km/h で地面をはなれます。滑走路はどれだけの長さが必要で、加速にどれだけの時間がかかるでしょうか。
解答:
時間がわからないので、時間を含まない式
加速にかかる時間は v = a · t から求めます。
平均の速さで検算しましょう。静止した状態からの加速では、平均の速さは最後の速さの半分の 35 m/s で、35 s では 35 m/s · 35 s = 1,225 m になります。飛行機の加速には 35 s かかり、滑走路は 1.2 km 以上必要です。そのため大きな空港の滑走路は、離陸を中止する場合の余裕も見こんで、数キロメートルの長さがあります。
例題7:ぬれた道路とシカ
運転手がぬれた道路を速さ 60 km/h で走っていると、前方 40 m の所にシカが見えました。反応時間は 1 s で、ぬれたアスファルトの上では車は 5 m/s2 で減速します。車はシカの手前で止まれるでしょうか。
解答:
途中の計算結果を丸めないように、速さは分数のままにしておきます。停止距離は空走距離と制動距離の和です。
それぞれ別々に代入します。
合わせて
例題8:橋から落とした石
橋から石を落とすと、1.5 s 後に川に落ちました。橋は水面からどれだけの高さにあり、石はどれだけの速さで水面に当たるでしょうか。空気抵抗は無視します。また、高さが2倍の橋から落とすと、何秒かかるでしょうか。
解答:
これは自由落下なので、下向きを正の向きにとります。
これはおよそ 53 km/h です。
高さが2倍になっても、時間は2倍にはなりません。
例題9:横風の中のドローン
ドローンが空気に対して速さ 12 m/s で、機首を真北に向けて飛んでいます。東風、つまり西向きに動く空気が速さ 5 m/s で吹いています。ドローンは地面に対してどれだけの速さで動き、北からどれだけの角度ずれるでしょうか。
解答:
ドローンは2つの運動を同時にしています。空気に対して飛ぶ運動と、空気に流される運動です。合成速度はこの2つの速度のベクトルの和で、2つの速度は垂直なので、三平方の定理を使います。
北からの角度は、速度がつくる直角三角形から求めます。風の速さが対辺、合成速度が斜辺です。
単純に足すと 17 m/s になりますが、2つの速度は同じ向きではありません。答えは 12 m/s より大きく 17 m/s より小さいはずで、13 m/s はその条件を満たしています。ドローンは地面に対して速さ 13 m/s で飛び、風によって北から西へおよそ 23° それます。1分間で横に 300 m 流されます。
例題10:観覧車
遊園地の観覧車は半径が 20 m で、1周するのに 4 min かかります。回転数(振動数)と角速度はどれだけで、外周のゴンドラはどれだけの速さで動くでしょうか。
解答:
回転数は周期の逆数です。
角速度は、1周期あたり1回転の角 2π です。
ゴンドラの速さは次のとおりです。
ゴンドラは1周で観覧車の円周、およそ 126 m を4分かけて進みます。これはおよそ 1.9 km/h で、ゆっくり歩くくらいの速さです。そのため、大型の観覧車と同じように、回したままでもゴンドラに乗りこめるはずです。
例題11:パイロット訓練用の遠心機
パイロットの訓練に使う遠心機は、長さ 8 m のアームの先にカプセルがついています。カプセルの向心加速度を 6g、つまり重力加速度の6倍にするには、1分間に何回転させなければならないでしょうか。
解答:
向心加速度の式 ac = ω2 · r から、まず角速度を、次に回転数を求めます。
単位は
1分間では
例題12:駅と駅の間の地下鉄
地下鉄の電車が駅から加速度 1.2 m/s2 で 15 s 間加速し、次に一定の速さで 30 s 間走り、最後に 1.5 m/s2 で減速して次の駅に止まります。駅と駅の間の距離と、電車の平均の速さはどれだけでしょうか。
解答: 走行を3つの区間に分け、それぞれの区間で1種類の運動の式を使います。
加速は静止した状態からです。加速が終わったときの電車の速さは
で、進んだ道のりは次のとおりです。
一定の速さでの走行は、速さ 18 m/s、つまりおよそ 65 km/h です。
減速は 18 m/s から止まるまでです。
全体では次のようになります。
駅と駅の間はおよそ 780 m で、電車は1分足らずの間に、平均の速さおよそ 49 km/h でその距離を走ります。最高の 65 km/h で走るのは全体のおよそ半分の時間だけなので、平均の速さはそれよりかなり小さくなります。駅の間隔が1 kmくらいというのは、都市の地下鉄ではふつうです。
例題13:グラフの読み取り
グラフは、大輝くんの電動キックボードの速さを12秒間記録したものです。それぞれの区間でキックボードの加速度はどれだけで、全体で進んだ道のりと平均の速さはどれだけでしょうか。
解答: 運動の種類が変わる点での速さをグラフから読み取ります。はじめは 4 m/s、時刻 4 s では 8 m/s、時刻 10 s でもまだ 8 m/s、時刻 12 s では0です。加速度は、速さの変化をかかった時間で割ったものです。
これは計算しなくてもグラフからわかります。グラフの傾きが急な区間ほど、加速度の大きさは大きくなります。右上がりの区間は正の加速度、水平な区間は加速度0、右下がりの区間は負の加速度を表します。3つ目の区間では、キックボードの加速度は −4 m/s2、つまり 4 m/s2 の減速です。
道のりは速さのグラフの下の面積です。1つ目の区間は台形、2つ目は長方形、3つ目は三角形になります。
12 s で合わせて s = 80 m 進むので、平均の速さは次のとおりです。
検算:平均の速さは0と最高の速さ 8 m/s の間にあるはずで、キックボードはほとんどの時間を8 m/sで走っているので、8 m/sに近くなるはずです。キックボードの加速度は順に 1 m/s2、0、−4 m/s2 で、進んだ道のりは 80 m、平均の速さはおよそ 6.7 m/s、時速にして 24 km/h です。
力が出てくる問題も、同じ手順で解くことができます。そのような問題は記事力と運動の例題にあります。