等速直線運動
高速道路でクルーズコントロールを 108 km/h に設定したとします。車はずっと同じ速さで、まっすぐ前へ進み、スピードメーターの針はまったく動きません。車は1秒間に何メートル進むでしょうか。速さをメートル毎秒に換算するので、3.6 で割ります。
車は1秒ごとに 30 m 進みます。2秒で 60 m、3秒で 90 m というように、1秒たつごとに30メートルずつ増えていきます。
左は道路を上から見たもので、車は上へ向かって走っています。この車は、1秒たつごとに道路にオレンジの印、例えばペンキのしずくを残していきます。車は1秒ごとに同じ道のりを進むので、印はどれも 30 m ずつの等しい間隔で並びます。右はグラフです。横軸は秒で表した時間 t、縦軸は車が最初の印から進んだメートルで表した道のり s です。縦軸は道路と同じ縮尺なので、グラフの赤い点はいつも車と同じ高さにあります。アニメーションでは6秒間の走行が進み、1秒ごとに道路の印とグラフのオレンジの点が一つずつ増えます。
直線上を、物体の速さが変わらずに進む運動を等速直線運動といいます。直線運動とは、軌跡が直線になる運動です。等速運動とは、物体が等しい時間に等しい道のりを進む運動で、瞬間の速さが一定であることと同じです。一定の速さで直線上を走る車は、曲がることができません。曲がれば直線から外れてしまうからです。引き返すこともできません。引き返すには速さを0まで落とさなければならないからです。つまり、速度の向きも変わりません。ロータリーを回る車と違って、ベクトルとしての速度全体、つまり大きさも向きも一定のままです。
これと完全に同じように運動するものはありません。いつも少しは風が吹きますし、道路が上り坂になることもあります。それでも、まっすぐな高速道路をクルーズコントロールで走る車、地下鉄の駅のエスカレーター、まっすぐな線路を走る列車は、等速直線運動にかなり近い運動をしています。
道のりの式
式だけが知りたいなら、物体が速さ v の等速運動で時間 t の間に進む道のり s は、次の式で求めます。
この式は、すでに知っている速さの式
つまり、1秒ごとに 30 m 進む車は、10秒ではその10倍進みます。クルーズコントロールで走る車が1分、つまり 60 s で進む道のりは次のとおりです。
単位も数と同じように計算します。分母の秒は、かける秒と約分されて、メートルが残ります。
もし答えが、例えばメートル×秒になったら、どこかで間違えたことがわかります。
注意しましょう。式 s = v · t が成り立つのは等速運動の場合だけです。速さが変わる場合は、どの速さを式に入れればよいかわかりません。使えるのは平均の速さだけで、
かかる時間
式 s = v · t の両辺を速さ v で割ると、時間が得られます。
鈴木さん一家が走った高速道路は約 205 km でした。車がずっと一定の速さ 100 km/h で走ったとすると、かかる時間は次のとおりです。
高速道路は定規のようにまっすぐではありませんが、式には影響しません。道のりは軌跡に沿って測るので、s = v · t はどんな等速運動にも成り立ちます。一定の速さでカーブを走る車も同じです。
2.05 h は何時間何分でしょうか。2時間5分でないことは確かです。1時間は100分ではなく60分です。2時間はそのままにして、残りの0.05時間を分に換算します。
かかる時間は 2 h 3 min です。
残る三つ目の量は速さです。速さは式
3分の1で割ることは3をかけることと同じなので、6 · 3 = 18 になりました。分数が苦手なら、すべてメートルと秒に換算します。20分は 20 · 60 s = 1,200 s です。
5 m/s に 3.6 をかけると 18 km/h になるので、どちらの方法でも同じ結果です。
道のりのグラフは直線
はじめに考えたクルーズコントロールの車の道のりを表にまとめます。
| t | s |
|---|---|
| 0 s | 0 m |
| 1 s | 30 m |
| 2 s | 60 m |
| 3 s | 90 m |
| 4 s | 120 m |
| 5 s | 150 m |
| 6 s | 180 m |
表の各行がグラフの1点になります。時間を横軸に、道のりを縦軸にとります。上のアニメーションのオレンジの点は、こうしてできたものです。点はすべて、原点を通る一つの直線の上にあります。なぜ直線になるのでしょうか。
どの点からも、次の点へ同じ階段が続いています。右へ1秒(青)、上へ 30 m(赤)です。階段はどれも同じ幅と同じ高さなので、となり合う点を結ぶ線分はどれも同じ傾きで、折れ曲がらずにつながります。したがって、すべての点が一本のまっすぐな線の上に並びます。もし車がどこかで加速したら、そこでは階段が高くなり、線は上へ折れ曲がります。整数の秒と秒の間でも同じです。0.5秒で車は 15 m、0.1秒で 3 m 進み、これらの点もすべて同じ直線の上にあります。そのため、グラフは7個の点を打つだけでなく、実線でかきます。
直線の傾きの大きさは、少し右へ進んだときにどれだけ上がるかでわかります。階段の幅、つまり時間の変化を Δt、階段の高さ、つまり道のりの変化を Δs と書きます。この二つの比が傾きです。
出てきたのは、すでに知っている数、車の速さです。道のりのグラフの傾きは速さです。これは瞬間の速さの式
数学の言葉でいえば、道のりは時間の1次関数です。1次関数は式 y = a · x + b で表され、そのグラフはいつも直線です。a は、x が1増えたときに y がどれだけ増えるかを表し、傾きといいます。b は、直線が縦軸と交わる点の高さを決めます。式 s = v · t は、x の代わりに時間、y の代わりに道のりをとった1次関数で、傾きは速さ、b = 0 なので直線は原点を通ります。このような関係は比例です。時間が2倍になれば、車の進む道のりも2倍、時間が3倍になれば道のりも3倍になります。
速い車ほどグラフは急になる
橋の上で、クルーズコントロールで走る車が、72 km/h で走るトラックを追い越します。トラックの速さは次のとおりです。
時間も道のりも橋から測ることにして、両方のグラフを一つの図にかきます。
車の赤い直線は、トラックの青い直線より急です。車のほうが1秒ごとに多く進むからです。道のりのグラフが急なほど、運動は速くなります。もしトラックが止まっていたら、グラフは水平で、傾きは0になります。
グラフから値を読みとることもできます。そのために方眼をかいてあります。トラックは 3 s でどこまで進むでしょうか。横軸で3を見つけ、破線に沿って青い直線にぶつかるまで上へ進みます。そこから左へ縦軸まで進むと、60 m と読みとれます。逆に、車が橋から 120 m の地点に着くのはいつかを考えます。縦軸で120を見つけ、右へ赤い直線まで進み、そこから下へ時間の軸まで進むと、4 s 後とわかります。どちらも計算で確かめられます。
二つの直線の縦の差は、車がトラックよりどれだけ前にいるかを表します。6秒後には 180 m − 120 m = 60 m です。車とトラックの差は1秒ごとに 10 m ずつ広がります。これは二つの速さの差 30 m/s − 20 m/s = 10 m/s そのものです。
0から始まらない場合
ここまでは、ストップウォッチを押した地点から道のりを測ってきました。しかし、物体がある程度進んでからストップウォッチを押すこともよくあります。高速道路のわきには、起点から何キロメートルの地点かを示す数字のついた標識、キロポストが立っています。ある車が21キロメートルのキロポストを通過し、そこからは一定の速さ 90 km/h で走ります。2時間後には何キロメートルの地点にいるでしょうか。
2時間で 90 km/h · 2 h = 180 km 進みます。しかし、車は0から出発したわけではないので、キロポストの数は180ではありません。キロポストは高速道路の起点から測っているので、ストップウォッチを押した時点で、車はすでに 21 km 進んでいたものとして計算します。この道のりを初めの道のりといい、s0 で表します。時刻 t での道のりは、初めの道のりに、ストップウォッチを押してから進んだ道のりを足して求めます。
代入します。
2時間後、車は201キロメートルの地点にいます。初めの道のりが0なら、もとの式 s = v · t になります。
グラフはもう原点からではなく、縦軸上の高さ s0 = 21 km から始まります。この高さを青い線分で示しています。傾きはやはり速さで、グラフは1時間ごとに 90 km ずつ上がります。灰色の破線は、同じ速さで高速道路の起点から出発した車のグラフです。二つの直線は傾きが同じなので平行で、赤い直線が s0 だけ上にあるだけです。1次関数 y = a · x + b の言葉でいえば、a が速さ、b が初めの道のりです。
逆に考えてみましょう。車が156キロメートルの地点に着くのはいつでしょうか。156 を90で割りたくなりますが、それでわかるのは、高速道路の起点から出発した場合にかかる時間です。式から出発して、時間について解きます。
代入します。
車が156キロメートルの地点に着くのは1時間半後、つまり 1 h 30 min 後です。
正確にいえば、キロポストの数は、車が進んだ道のりではなく、車が高速道路のどこにいるかを表しています。車が前へ進むだけなら、それは高速道路の起点から進んだ道のりと同じです。なぜこれが大切なのかは、この記事の最後でわかります。
速さのグラフ(v-tグラフ)
速さもグラフにかけます。クルーズコントロールの車は、時刻がいつでも 30 m/s で走っているので、速さのグラフは高さ30の水平な線になります。
このグラフでは、道のりはどちらの軸にも現れません。グラフの下の面積に隠れています。最初の10秒間の線の下には、幅 10 s、高さ 30 m/s の赤い長方形ができます。その面積、つまり幅×高さは次のとおりです。
これは、車が10秒間に進む道のり s = v · t そのものです。長方形の辺は長さではなく速さと時間なので、ここでの面積は平方メートルではなくメートルになります。白い線は長方形を1秒ごとに10本の帯に分けています。どの帯も面積は 30 m/s · 1 s = 30 m で、はじめのアニメーションで道路にできた隣り合う印の間隔30メートルと同じです。
かけ算で済むのに、なぜわざわざ面積を考えるのでしょうか。速さのグラフの下の面積は、グラフが水平でないときにも道のりを表すからです。加速する運動を学ぶときには、速さのグラフは右上がりになり、その下は長方形ではなく三角形や台形になります。そのときは、道のりをそれらの面積として求めます。台形は三角形と長方形に分けられるので、三角形と長方形の面積の公式があれば十分です。
止まっているのか、戻っているのか
翔太さんは朝、家から自転車でまっすぐな道路を走りだします。一定の速さ 20 km/h で2時間走り、食堂で1時間昼食をとり、最後に同じ速さで家に戻ります。
今度の縦軸は道のりではなく位置です。このようなグラフを x-tグラフといいます。道路に沿って x 軸をとり、原点を翔太さんの家にします。すると、位置 x は、キロポストが道路上の車の場所を示すのと同じように、翔太さんが道路に沿って家からどれだけ離れているかを表します。灰色の破線は、翔太さんが進んだ道のりで、ハンドルについたサイクルコンピューターが示す値です。昼食の終わりまでは位置と重なっています。赤い部分はもうおなじみです。翔太さんは2時間で 40 km 進み、グラフは傾き 20 km/h で上がっていきます。
青い部分は水平です。時間はたっていますが、翔太さんは家から 40 km のところにとどまっているので、止まっています。グラフが水平なら静止していて、傾きも速さも0です。
緑の部分は下がっています。翔太さんは家に向かって戻っていて、位置 x は1時間ごとに 20 km ずつ小さくなります。グラフが下がっていれば、逆向きに運動しています。翔太さんの速さは、グラフが1時間にどれだけ下がるかでわかります。ここでは 20 km 下がるので、20 km/h で走っています。このときの速度は、朝とは逆向きです。そのため、物理ではこれにマイナスの符号をつけて、位置 x が時間とともに減っていくことを表すことがあります。
キロポストのところで、物体がどこにいるかと、どれだけの道のりを進んだかを区別した理由が、ここでわかります。サイクルコンピューターは道のりを測っていて、道のりは時間とともに減ることがありません。そのため、破線は昼食のあとも上がり続け、夕方には 80 km で終わります。一方、位置のグラフは0で終わります。翔太さんは家に戻ったからです。一方向に進むときは、位置と道のりは初めの値の分だけ違うだけなので、キロポストの例では道のりの式 s = s0 + v · t で十分でした。物体が引き返すときは、位置で考えなければなりません。
翔太さんのサイクリング全体は等速運動ではなく、三つの等速運動の部分からできています。1日全体の平均の速さは、昼食も含めた全体の道のりを全体の時間で割ったものです。全体の道のりは最後の位置ではありません。最後の位置は0です。全体の道のりは破線のグラフが終わる 80 km、つまり 40 km + 0 km + 40 km です。
グラフに垂直な部分が現れることは決してありません。それは、翔太さんが0秒のうちに少し先へ移動したことを意味するからです。また、左へ曲がっていくグラフは、翔太さんの時間が逆に進んでいることを意味します。どちらも、これまでにだれも実現したことはありません。
計算ツール
一つ目の計算ツールは速さと時間から道のりを、二つ目は道のりと速さから時間を求めます。最初に入っている値は、この記事の例のものです。108 km/h のクルーズコントロールで走る10秒間と、一定の速さ時速100 kmで走る鈴木さん一家のドライブです。
式 s = s0 + v · t と道のりのグラフを使えば、1台の車がもう1台に追いつく問題や、2本の列車が向かい合って走る問題のような文章題も解けます。それぞれの乗り物がグラフ上に自分の直線をもち、出会う地点は直線どうしの交点です。このような問題は、あとで扱います。
その前に、記事力学の問題の解き方で、どんな物理の問題にも役立つ手順を見ておきましょう。問題文の書き出し、単位の換算、図、文字式のままでの解法です。