三平方の定理
三平方の定理(ピタゴラスの定理)は、おそらく最も有名な数学の定理です。サモス島のピタゴラス本人については、別のページにくわしく書かれています。ここからは三角形の話をしましょう。
三角形の辺を1辺とする正方形の面積
三平方の定理は、直角三角形の辺を使ってつくった正方形の面積の間に成り立つ、便利な関係を表しています。次のような直角三角形があるとします。
背景のます目で、三角形の大きさがわかります。直角をはさむ2辺のうち、AC の長さは4、BC の長さは3です。では、辺 AB、つまり三角形の斜辺の長さはいくつでしょうか。ひと目見ただけでは、長さはわかりません。しかし、計算で求めてみることはできます。
まず、直角をはさむ辺 BC を1辺とする正方形をかきます。すべての辺の長さが辺 BC と同じ3の正方形です。図にかき入れると、次のようになります。
すべての辺の長さが3の正方形 BCDE ができました。この正方形の面積はいくつでしょうか。正方形の面積は2辺の長さをかけて求めるので、正方形 BCDE の面積は 3 · 3 = 9 です。もう一方の直角をはさむ辺 AC を1辺とする正方形も、図にかき入れます。この正方形の辺の長さは4です。
この正方形の面積は 4 · 4 = 16 です。最後に、斜辺 AB を1辺とする正方形をかき入れます。
辺 AB の長さがわからないので、この新しい正方形の面積はまだわかりません。しかし、ここで三平方の定理がうまく使えます。この定理によると、最後の正方形 ABHI の面積は、前の2つの正方形の面積の和に等しくなります。前の2つの正方形の面積は9と16だったので、最後の正方形の面積は、三平方の定理により 9 + 16 = 25 です。図にかき入れます。
あとは最後の問題に答えるだけです。正方形 ABHI の面積が 25 なら、この正方形の辺の長さはいくつでしょうか。2乗して25になる長さなので、辺 AB の長さは
定義
三平方の定理は、次のように言い表せます。「直角三角形の斜辺を1辺とする正方形の面積は、直角をはさむ2辺をそれぞれ1辺とする正方形の面積の和に等しい」。式で表すと、ふつう次のようになります。
ここで、a と b は三角形の直角をはさむ辺の長さ、c は斜辺の長さです。
では、三平方の定理は何を表していて、この式はさきほどの図とどう関係しているのでしょうか。三角形の辺を1辺とする正方形の面積とは、その辺と同じ長さの辺をもつ正方形を考えて、その面積を求めたものです。正方形の面積は、1辺の長さともう1辺の長さをかけて求めます。つまり、辺の長さが c なら、面積 S は S = c · c で、累乗を使えば S = c2 と書けます。
したがって、式 c2 = a2 + b2 は「辺の長さが c の正方形の面積は、辺の長さが a と b の正方形の面積の和に等しい」と読めます。
もう一度強調しておきますが、この定理が成り立つのは直角三角形だけで、一般の三角形では成り立ちません。三平方の定理は、ふつう2つの辺の長さがわかっていて、残りの辺の長さを求めたいときに使います。直角をはさむ2辺 a と b の長さがわかっていて、斜辺 c の長さを知りたいなら、直角をはさむ辺を1辺とする正方形の面積を計算します。つまり、a2 + b2 を計算します。これで斜辺 c を1辺とする正方形の面積、つまり c2 が得られます。辺 c の長さを求めるには、計算した面積の平方根をとるだけです。こうして、次の公式が得られます。
ここで c は斜辺の長さ、a, b は直角をはさむ辺の長さです。逆に、斜辺と直角をはさむ辺の一方の長さがわかっていて、もう一方の長さを求めたいときも、同じように計算できます。ただし、その前に式を、求めたい辺について解いておきます。つまり、c と b がわかっていて a を求めたいなら、式
の両辺から b2 をひいて、a2 について解きます。
左辺と右辺を入れかえます。
最後に、平方根をとります。
例題1
2つの辺の長さ a = 3 と b = 4 がわかっている三角形 ABC を考えます。最初に考えたのと同じ三角形です。残りの辺、辺 c の長さはいくつでしょうか。上の公式を使って計算してみましょう。三角形は次の図のとおりです。
直角をはさむ2辺の長さがわかっていて、斜辺の長さがわかりません。そこで、最初の、変形していない公式を使います。
変数 a と b に辺の長さを代入します。
公式には2乗があります。念のため、次の関係を思い出しましょう。
2乗を計算すると、次のようになります。
辺 c の長さは5です。
例題2
この例題では、直角をはさむ辺の1つと斜辺の長さがわかっているときに、もう1つの直角をはさむ辺の長さを計算してみます。辺の長さが |AC| = 10、|BC| = 6 の三角形 ABC を考えます。三角形は次の図のとおりです。
図から、斜辺、つまり最も長い辺は辺 |AC| だとわかります。求めたいのは辺 |AB| の長さです。直角をはさむ辺の長さを求める2つ目の公式に代入します。
三平方の定理を正しく使うために、それぞれの変数が何を表すのかを確認しましょう。この公式では、変数 a は求めたい辺の長さで、この例では辺 |AB| です。変数 c は斜辺、つまり最も長い辺の長さで、この例では辺 |AC| です。変数 b は、長さがわかっている直角をはさむ辺の長さで、この例では |BC| です。そこで、公式には次のように代入します。
わかっている辺の長さを代入します。
2乗を計算してひきます。
最後に平方根をとります。
辺 |AB| の長さは8です。
文章題
友だちの家までまっすぐな道を歩いていくとします。その道の長さは250 mです。この250 mを歩いたら左に曲がり、さらに100 m歩くと友だちの家に着きます。畑を横切ってまっすぐ行くと、道のりはどれだけ短くなるでしょうか。
まず、道路にそって歩くときの道のりを計算します。はじめに250 mまっすぐ歩き、それから左に100 m歩きます。合わせて 250 + 100 = 350 mです。次は、畑を横切る道のりの計算です。それには図が必要です。
図の1目盛りは50 mです。畑を横切ってまっすぐ行く道は、どうなるでしょうか。点 A から点 C までの線分になります。図に赤でかき入れます。
これで、畑を横切る道のりを計算するには、三平方の定理をうまく使えばよいことがわかります。求めたいのは斜辺の長さで、直角をはさむ2辺の長さはわかっているので、最初の公式を使って次のように書きます。
長さを代入します。
2乗します。
平方根をとって、四捨五入します。
畑を横切る道のりは269 mです。まだ終わりではありません。問われているのは、畑を横切るとどれだけ短くなるかでした。そこで長さの差を求め、その差を r とします。
したがって、およそ81 m短くなります。
正方形の辺の長さ
対角線の長さが10の正方形の辺の長さはいくつでしょうか。三平方の定理はどう役に立つでしょうか。正方形の中に、辺の長さを計算するのに使える直角三角形を見つける必要があります。念のため思い出しておくと、正方形は4つの辺の長さがすべて等しい図形です。いまの状況を図にかいてみましょう。
正方形の中に、直角をもつ三角形が2つ現れました。これらを使って、辺の長さを計算できます。たとえば三角形 BCD を使いましょう。辺 DB が斜辺で、残りの2辺が直角をはさむ辺です。直角をはさむ辺の長さはわかりませんが、斜辺の長さはわかっています。直角をはさむ2辺の長さは等しく、|BC| = |CD| です。基本の三平方の定理を使います。
直角をはさむ2辺は等しいので、片方の2乗を計算して2倍すれば十分です。両方を2乗しても同じ結果になるからです。したがって、次のように書けます。
斜辺 BD の長さはわかっていて、10です。式に代入します。
10を2乗します。
両辺を2で割ります。
もうすぐ答えです。正方形の辺の長さの2乗は50に等しいことがわかりました。辺の長さを求めるには、さらに両辺の平方根をとる必要があります。正の数で考えているので、そうしてかまいません。
50の平方根はこの形のままにしておきます。右辺では、平方根と2乗がたがいに打ち消しあうので、どちらも外せます。
50の平方根を計算してもかまいません。四捨五入すると7になります。
したがって、正方形の辺の長さはおよそ7、正確には50の平方根です。
計算ツール
直角をはさむ2辺から斜辺を、斜辺ともう1つの辺から直角をはさむ辺を計算できます。それぞれの欄で単位を切りかえられます。
章: 三角形, 三角形の高さ, 三角形の中線, 三角形の外接円と内接円, 直角三角形, 三角形のかき方, 三角形の合同, 三角形の相似, 三角形の面積, 三平方の定理