方程式の同値変形
方程式を変形するときは同値変形を使います。同値変形とは、方程式の解を変えない変形のことです。同値変形の目的は、方程式をもっと簡単な形にして、そこから解を計算できるようにすることです。
方程式とは
まず、方程式とは何か、どう書くかを簡単に確認しておきます。2つの関数 f(x) と g(x) があるとき、それらを等号で結ぶと方程式ができます。
このとき、f(x) を方程式の左辺、g(x) を右辺といいます。抽象的な関数 f(x) と g(x) の代わりに、具体的な関数、たとえば f(x) = 3x と g(x) = x + 2 を考えることもできます。すると方程式は次のようになります。
方程式の解は集合(たとえば S)で表せます。集合 S のどの x を方程式に代入しても、方程式が成り立ちます。この例の方程式の解は、次の集合になります。
方程式に代入すると、次のようになります。
方程式の同値変形とは、方程式の解を変えない変形のことです。つまり、関数 f(x) から関数 f1(x) を得て、同じ変形で関数 g(x) から g1(x) を得たとき、やはり次の等式が成り立つような変形です。
方程式(不等式ではありません!)のいちばん簡単な同値変形は、左辺と右辺を入れかえることです。次の等式が成り立つなら、
左辺と右辺を入れかえた次の式も成り立つことは明らかでしょう。
方程式については、記事方程式とはで詳しく説明しています。
足し算
いちばん簡単な例は、方程式の両辺に同じ式を足すことです。同値変形はいつも両辺に対して行います。次の方程式を考えましょう。
この方程式は、両辺に3を足すと解けます。方程式を変形するときは、ふつう変形を始めた行の右に斜線を引き、その後ろに行う変形を書きます。
一般的に書くと、2つの関数 f(x) と g(x) があるとき、両辺に3つ目の関数 h(x) を足しても、方程式の解は変わりません。
このように、足すのは数だけでなく、関数でもかまいません。
ふつうは変数を左辺に集めます。そのためには、両辺に −2x を足します。つまり 2x を引きます。
もちろん、必要なら分数を足してもかまいません。
両辺に2分の1を足せば答えが出ます。
両辺に足す変形がよく使われるのは、式を方程式の一方の辺からもう一方の辺へ「移す」ときです。次の方程式があるとします。
変数を含む式、つまり 2x を左辺に移すにはどうすればよいでしょうか。両辺に −2x を足せばよいのです。すると 2x − 2x = 0 なので、右辺の 2x は0になります。そしてもう一方の辺には −2x が現れます。
かけ算
方程式の両辺に関数をかけることもできます。条件はただ一つ、その関数が0であってはいけないということです。方程式に0をかけることはできませんし、0に変形できる関数、たとえば f(x) = x − x をかけることもできません。次の方程式があるとします。
両辺に2をかけることができます。
これはあまり意味のない変形でした。かけ算がよく使われるのは、たとえば分数をなくしたいときです。
この方程式の両辺に右辺の分数の分母をかけると、分数の性質によって式 5x がきれいに約分できます。
ここで分数に式 5x をかけると、5x は分数の分子に入ります。5x は分母にも分子にもあるので、約分できます。
この節の初めに、0をかけてはいけないと説明しました。いま式 5x をかけましたが、この式は変数を含んでいます。この変数に0を代入すると式全体も0になり、0をかけたことになってしまいます。どうすればよいでしょうか。
この変形を行ってよい条件を決めておけば解決します。ここでは、x が0でない場合に限って 5x をかけてよい、と書いておく必要があります。ところで、両辺にかける前の方程式をもう一度見てみましょう。式 5x はすでに分数の分母に含まれています。これは何を意味するでしょうか。0で割ることはできないので、関数
もう一度まとめます。この方程式には、分母に式 5x がある分数が含まれています。0で割ることはできないので、方程式が意味をもつのは x が0でないときだけです。そのため、安心して両辺に 5x をかけることができます。必要な条件は、分母にある関数の定義域がすでに保証しているからです。
複雑な式をかける場合
大事な注意があります。方程式に式をかけるときは、必ず右辺全体と左辺全体にかけなければなりません。例として次の方程式を考えます。
両辺に2をかけるなら、次のように辺全体にかける必要があります。
かっこを書き忘れると、間違った結果になってしまいます。
前の場合とは結果が違います。もっと複雑な式をかけるときも同じで、両辺全体にかけなければなりません。例として次の方程式を考えます。
右辺の分母にある変数をなくすために、この方程式の両辺に式 x + 3 をかけます。
分数は式 x + 3 できれいに約分できる形になりました。
さらに左辺を展開し、最後に2を引いて2を左辺に「移す」と、右辺は0になります。
割り算
方程式は、かけるのと同じように割ることもできます。制限もかけ算と同じで、0で割ってはいけません。割り算は簡単にかけ算に直せるからです。両辺を式 w で割るのは、両辺に分数 1/w をかけるのと同じです。割り算は、たとえば次のような例でよく使われます。
この形の方程式でできることは多くありません。両辺を12で割れば、x の値が求まります。
両辺に 1/12 をかけても、同じ結果になります。
2乗する変形
方程式の変形では累乗も使えますが、いくつか制限があります。まず累乗について復習しましょう。次の等式は成り立つでしょうか。
ある数を2乗してから平方根をとると、元の数に戻るでしょうか。これはひっかけ問題で、答えは「いつもそうなるとは限らない」です。x に負の数、たとえばマイナス3を代入してみましょう。
このように、等式は成り立たなくなります。負の数を2乗すると正の数になりますが、正の数の平方根をとると、また正の数になるからです。この等式が成り立つのはどんなときでしょうか。正の数、正確には0以上の数だけを扱っているとわかっているときです。したがって、正の数だけを扱っているとわかっているときは、両辺を2乗してもかまいません。
たとえば図形の問題では、線分の長さを含む方程式をよく計算します。長さは負になりえないので、このときは安心して2乗できます。2乗するときや平方根をとるときも、両辺全体に対して行わなければなりません。例を見てみましょう。
正の数だけを扱っていると仮定すると、両辺を2乗してかまいません。
2次方程式が得られました。これはリンク先の記事で説明している方法で解けます。
2乗する必要があるのに、正の数だけを扱っているか確信がもてない方程式は、どう解けばよいでしょうか。2乗してから、最後に解を確かめればよいのです。2乗すると、元の方程式の正しい解ではない値が出てくることがあるからです。例を見てみましょう。
両辺を2乗します。
ここでも2次方程式が得られたので、適当な方法、たとえば因数分解で解きます(詳しい手順はリンク先の記事にあります)。
得られた値は1と4です。しかし、同値でない変形をしたので、解を確かめる必要があります。この2つの値を元の方程式に代入し、どちらが元の方程式の正しい解かを調べます。まず1を代入します。
確かめた結果、1は元の方程式の解ではないことがわかりました。4はどうでしょうか。
4は元の方程式の解です。これで答えが求まりました。
章: 方程式の同値変形, 不等式の同値変形