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1次不等式

1次不等式は、ふつうの1次方程式と同じような変形で解きます。1次不等式はふつう ax + b>0 の形をしています(不等号が <、≧、≦ の場合もあります)。あとは不等式を x>−b/a の形に変形すれば、答えが出ます。もちろん、ここでは a>0 と仮定しています。a が負のときは、割るときに不等号の向きが逆になり、x<−b/a となります。

ふつうの1次不等式

1次不等式は不等式の同値変形で解けます。

  • 簡単な例は次のような不等式です。

    3x+9>3

    まず、未知数を含まない項をすべて右辺に移します。つまり、不等式の両辺に −9 を足すと、次の不等式が得られます。

    3x+9−9>3−93x>−6

    次に、両辺を3で割ります。

    3x/3>−6/3x>−2

    これがこの不等式の答えです。不等式は x > −2 を満たすすべての x で成り立ちます。

    この不等式はグラフを使って解くこともできます。不等式 3x + 9 > 3 について、左辺と右辺の2つの関数のグラフをかきます。関数は f(x) = 3x + 9 と g(x) = 3 です。グラフは次のようになります。

    関数 f(x) = 3x + 9 と g(x) = 3 のグラフ

    2つのグラフは1点 x1 で交わり、その x 座標はちょうど −2 です。また、x > x1 のすべての x、つまり区間 (−2, ∞) のすべての x で、赤い関数 3x + 9 のグラフが青い関数 3 のグラフの「上」にあることもわかります(ここで「上」とは「y 座標が大きい」という意味です)。これは、先ほど計算した答えと一致します。

  • マイナスがたくさんあるときは、不等式の両辺にマイナス1をかけると便利なことがあります。このときは、各項の符号を変えるだけでなく、不等号の向きも逆にしなければなりません。> は < に、< は > に変わります。

    −x<−10/⋅(−1)x>10

    もちろん、これは不等式の両辺にどんな負の数をかけるときにもあてはまります。もう一つ簡単な例を見てみましょう。

    −3x+8<2x−7−5x<−15/⋅(−15)x>3

    最初の段階では、ふつうに両辺に −2x を足して、変数を含む項をすべて左辺に移します。同時に両辺から8を引いて、定数を右辺に移します。あとは両辺に −15 をかけるだけです。

    参考として、この不等式をグラフで解いたところを見てみましょう。2つの関数 f(x) = −3x + 8 と g(x) = 2x − 7 のグラフをかきます。

    関数 f(x)=-3x+8 と g(x)=2x-7 のグラフ

    x > 3 のときはいつも、関数 −3x + 8 の赤いグラフが関数 2x − 7 の青いグラフの下にあることがわかります。

分母に変数を含む場合

分母に変数を含む分数がある1次不等式は、少し複雑な方法で解きます。例として次の不等式を考えます。

2x+3>4

分母にある未知数は符号がわからないので、両辺にかけることはできません。変数の値が負なら、不等号の向きを逆にしなければならないからです。そのため、分母にある変数を両辺に気軽にかけることはできません。そのような変形は不等式の同値変形ではありません。

まず、左辺が1つの分数、右辺が0になるように不等式を変形します。両辺に −4 を足すと、次の形になります。

2x+3>42x−1>0

次に、左辺の式を1つの分数にまとめます。−1 に分数 xx をかけて2つの項を通分し、分数を足します。

2x−1>02x−xx>02−xx>0

では、分数が正になるのはどんなときでしょうか。分数が正になるのは、分子と分母がどちらも正のときか、どちらも負のときです。一方が正でもう一方が負なら、分数は負になります。たとえば分数 43 は正の数を表します。分数 −34 は負の数を表します。分数 −3−4 は、マイナスどうしが打ち消し合うので、また正の数を表します。一般に次のように書けます。

正正=正正負=負負正=負負負=正

そこで、2組の不等式を解く必要があります。まず、分子と分母がどちらも正になる場合を求めます。

  1. 分子と分母がどちらも正になるには、次の2つの不等式が同時に成り立たなければなりません。

    2−x>0∧x>0

    1つ目の不等式では、2 を右辺に移して両辺に −1 をかけるだけです。

    2−x>0−x>−2x<2

    これで1つ目の不等式の解が求まりました。2つ目の不等式 x > 0 は、これ以上解く必要がありません。ここで、2つの解の共通部分をとります。知りたいのは2つの解が同時に成り立つ場合、つまり分子が正で、しかも分母も正である場合だからです。1つ目の解は区間 (−∞, 2)、2つ目の解は区間 (0, ∞) と書けます。この2つの区間の共通部分をとります。

    (−∞,2)∩(0,∞)=(0,2)

    これが不等式の解の一部です。この区間の数を代入すると、不等式は成り立ちます。たとえば区間 (0, 2) の数 x = 1 を代入すると、不等式 21+3>4、つまり 5 > 4 が得られます。残るのは、分子と分母がどちらも負になる場合です。

  2. 分子と分母がどちらも負になる場合は、次の不等式を解きます。

    2−x<0∧x<0

    ここでも不等式 2 − x < 0 をさっと解きます。

    2−x<0−x<−2x>2

    2つ目の解は、やはりそのまま x < 0 です。区間で書くと (2, ∞) と (−∞, 0) で、共通部分をとります。

    (2,∞)∩(−∞,0)=∅

    空集合になりました。これは何を意味するでしょうか。分数 2−xx では、分子と分母が同時に負になることはないということです。

あとは2つの結果の和集合をとれば、解の集合 S が得られます。

S=(0,2)∪∅=(0,2)

不等式 2x+3>4 は、区間 (0, 2) のすべての x で成り立ちます。関数 f(x)=2x+3 と g(x) = 4 のグラフをかいてみましょう。

関数 f(x)=\frac{2}{x}+3 と g(x)=4 のグラフ

関数 f(x)=2x+3 の赤いグラフは、ちょうど区間 (0, 2) で関数 g(x) = 4 の青いグラフの上にあることがわかります。

絶対値を含む1次不等式

絶対値を含む不等式は、もう少し手ごわくなります。絶対値の中の式が正で符号が変わらない場合と、式が負で符号が変わる場合を分けて計算しなければならないからです。つまり、1つの不等式の中に実質的に2つの不等式があることになります。簡単な例を見てみましょう。

|x+5|<12

まず、絶対値の中が0になる点を求めます。これは、代入すると絶対値の中の式全体が0になる数で、符号が変わる区間と変わらない区間を決めるのに使います。そこで、次の方程式を解きます。

x+5=0

答えは x = −5 です。この値で、x の範囲は2つの区間に分かれます。一方では関数 x + 5 は正の値をとり、もう一方では負の値をとります。つまり、区間 (−∞, −5) では負の数になり、区間 [−5, ∞) では正の数(正確には0以上の数)になります。例として、1行目は1つ目の区間の数、2行目は2つ目の区間の数です。

−8+5=−313+5=18

ここから何がわかるでしょうか。x にマイナス5より大きい値を代入すると、x + 5 は正の数なので、絶対値をとっても結果は変わりません。逆に、x の値がマイナス5より小さいと、x + 5 は負になり、絶対値がそれを正に変えます。そのため、不等式ではこの2つの場合を分けて考える必要があります。

まず、x を区間 [−5, ∞) から選ぶ場合の答えを計算します。このときは、絶対値をはずすだけで符号は変わりません。

x+5<12x<7x∈(−∞,7)

これで1つ目の解がほぼ求まりました。ただし、いま x を選んでいる区間との共通部分をとる必要があります。いま考えているのは区間 [−5, ∞) なので、たとえば x = −15 はこの区間に入らず、この1次不等式の解にはなりません。そこで共通部分をとります。

[−5,∞)∩(−∞,7)=[−5,7)

これが1つ目の結果です。次に、x を区間 (−∞, −5) から選ぶ場合の答えを計算します。この区間では、絶対値によって符号が変わります。不等式から絶対値をはずすには、符号を自分で変える必要があります。つまり、絶対値の中の式に −1 をかけて符号を変えます。次のように書きかえます。

|x+5|<12−(x+5)<12−x−5<12

両辺に 5 を足します。

−x<17

両辺に −1 をかけます。

x>−17

こうして次の結果が得られます。

x∈(−17,∞)

しかし先ほどと同じく、x は区間 (−∞, −5) から選んでいるので、この区間と結果との共通部分をとる必要があります。

(−17,∞)∩(−∞,−5)=(−17,−5)

これで2つの結果がそろったので、和集合をとるだけです。

x∈[−5,7)∪(−17,−5)=(−17,7)

確かめのために、関数のグラフを見てみましょう。

関数のグラフ

最後に、閉区間と開区間をどう使い分けるかについて少し補足します。x>0 のように不等号に等号を含まない場合は、x が0に等しくなれないので開区間を使います。x≧0 のように等号を含む場合は、x が0に等しくなれるので閉区間を使います。たとえば、いま解いた不等式に、解に「ぎりぎり」含まれない x = 7 を代入すると、次のようになります。

|x+5|<12(7+5)<1212<12

不等式は成り立ちません。12は12より小さくないからです。